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2010年4月23日

立体視の制約

今日から3Dテレビが出荷になったそうです。PS3も3D対応ファームウェアを配布。映像が飛び出して見える映画、カメラ、テレビ、そしてブルーレイ…2010年は立体テレビ元年ともなりました。でもこれって、はやるのかなあ?立体視のしくみから説明してみると、そんな簡単じゃないっぽい。

 仕組みとしては3つあり、ひとつには、視差バリアという細かーいクシのようなものを画面の前に置いて、右側と左側に違う映像を映す方法。これは、カーナビなどで助手席にはテレビの映像が、運転席にはナビの映像がそれぞれ見えるというしくみで、すでに実用化されている方法。特徴としては、裸眼立体視~「飛び出すメガネ」的な物を装着しなくても見えることです。
 もう一つは、偏光グラスという特殊なレンズをはめたメガネをかけて映像を見る方法。学校で「偏光板」を習った人は話が早いですが、偏光板とは「ある特定の方向に振動している光」だけを通す性質があって、偏光板の角度によって通す光と遮る光を選別する性質を使ったもの。偏光グラスは左右で違う角度の偏光板がはめてあり、それぞれ右目用、左目用の映像を同じ画面に違う偏向角度で投影することによって飛び出して見える仕組み。
 最後は、液晶シャッター方式。これもメガネを装着するんですが、今度は素早く動くシャッターが右目、左目、右目、左目…と交互に目をふさいで、画面の方も映像を左目、右目、左目、右目…と交互に写すことで左右違う映像が映せるという仕組み。メガネにはシャッターがついているので、シャッターを動かすための電源やタイミングをあわせるのに、コードがついています。たとえて言えば、イヤホンのメガネ版?みたいにコードがメガネからびろーんと伸びています。

 だいたいこの3種類が、今言われている「立体テレビ」とか「3D液晶」と呼ばれている物。ただ、これが僕らのテレビウォッチングに適しているかと言われると、ちょっと疑問なり。
 まずはカウチテレビ、つまりソファーに寝転んでポテチをつまみながらテレビを見ることができなくなっちゃう、という問題。これは特に視差バリア方式と偏光グラス方式があてはまります。これらは左右に映像を振り分ける技術であって、横になって見る=両目が上下にある状態では片側の映像しか見えなかったり、左右が逆に見えたりして、結局のところ「飛び出すテレビ」ではなく「引っ込むテレビ」になってしまったりします。
3番の液晶シャッター方式だけが、横になっても立体に見えますが、画面のゆがみが気になるはずです。本当の3次元は下からのぞき込むと下からの映像が見えるので自然にとらえられるんですが、あくまで立体テレビは2.5次元。正面以外から見ると、逆に平面感が強調されてしまいます。

ブラウン管のテレビが丸かった時代に生まれた人はラッキーです。テレビの表面が平らになったとき、たくさんの人が「テレビが凹んで見える」と言ったのを覚えていますか?あの感覚と同じで、今の多くの人が今の立体じゃないテレビできちんとテレビの「背景」と「主体」を区別して認識しているんだから、立体にしたからといって別段何が起こるの?ときかれても、「…」という話かもしれません。それどころか、今まで寝転んでテレビを見ていた人にとっては微妙な技術です。頭を垂直に固定するためには首や背中、腰に負担がかかります。立ってみている場合はさらに足、膝にも余計な力が入ります。映画「アバター」で立体がいける!と踏んだのかもしれませんが、家が映画館でもない限り疲れるだけ、とも言えます。
完全な3次元放送、つまりどこから見ても立体に見える技術が実現されるには頭の動きを追いかける技術や視線の動きを追いかける技術と、さらに「完全な」3次元撮影技術がなければ実現できない技術なんですね。

というわけでまとめますと、いろいろなメディアで3次元3次元といっていますが、あの技術はテレビの前に頭を前向きに固定する、恐れずに言えば独り者のための技術だと思います。お茶の間でみんなが飛び出すテレビにかじりつく、というのはまだまだ先の話になりそうです。

というか、オールドタイプな私としては、チャンネル引っ張ればONになるくらいのシンプルさが好きなんですけどね。

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